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2018年6月12日 (火)

「朝鮮半島情勢と日朝関係」講演会

 米朝首脳会談その日に
 何というタイミングであったろう、講演会「朝鮮半島と東北アジアの緊張緩和と平和に向けて」(主催:日朝教育・文化交流をすすめる愛知の会)が開かれたこの日、シンガポールでトランプ米大統領と共和国(北朝鮮)の金正恩朝鮮労働党委員長の「歴史的な首脳会談」がおこなわれ、共同声明に署名、発表されたのだった。
 当初、講師に五味洋治さん(東京新聞論説委員)が予定されていたが、とても講演どころでなく、氏は社に缶詰め状態でこの米朝首脳会談の経過状況を追うこととなり、講師が変更された。
 幸いにも、この人も多忙ではあったろうが駆け付けてくれた。
 康 文成(リョム ムンソン)さん(朝鮮大学准教授)が、「朝鮮半島情勢と朝・日関係」と題して、70分ほど話をされ、それが、「米朝首脳会談」の経過的報道を補完、下支えする内容であったので、「(歴史的)6・12米朝首脳会談」を深読みする糧となった。
 康さんは、はじめに日本の言論状況(主に政府、マスコミ)は、共和国(DPRK、北朝鮮)について語るとき「独裁国家」を強調し(過ぎ)、朝鮮民族の歴史を欠落させているとした。相手と対等に向き合う時、まず相手のことをよく知ることが相互理解の前提であることは当然であろう。
 日本の教科書的歴史知識は、豊臣秀吉の朝鮮侵略1592年の文禄の役(壬辰の倭乱)、1597年の慶長の役(丁酉の倭乱)があり、江戸時代には国交回復・朝鮮通信使という良好な時代はあったものの、明治以降は、朝鮮半島を巡っての清国、ロシアと覇権を争い(朝鮮への侵略、支配)、やがて日韓併合(植民地支配)へ進んだ、というようなことだけでは知ったことにならないだろう。
 現実に戻って、日・朝(朝・日)関係を改善し、一歩前へ進めようとすれば、金正恩氏率いる「朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)」は、何を達成しようとしているのかを知ることだと康さんはいう。
 私自身は感覚的ではあるけれども、隣国の韓国、共和国とは、歴史的な経過を知り、対等・友好の関係を築くことが日本の外交の柱の一つと考えてきたが、それは日本の側からの視点だけであって、地図上でも大陸の側・朝鮮半島から日本列島を見ることはほとんどなかった。
 では朝鮮(康さんは、共和国・DPRKをこのように表現をしていた。ここでは以下「朝鮮」と呼称する)の基本方針とは何かといえば、特別なことではなく「国力の強化、その方途は科学技術(人材の育成)」であり、「社会主義強国」の建設のためであるという。
 もう少し説明がいるだろう。私には全てを書ききれないが、これまで朝鮮=先軍政治(軍事優先政治)というワードが印象強くあった。しかし2013年開催の朝鮮労働党中央委員会で「並進路線」が決定された。この「並進路線」というのは、経済建設と核武力建設を並進させることに対する新たな戦略的路線とされ、金正恩第一書記(当時)は「新たな並進路線の真の優越性は、国防費を追加的に増やさなくても戦争抑止力と防衛力の効果を決定的に高めることにより、経済建設と人民生活向上に力を集中することができるとことにある」と報告したといわれている。
 端的に言えば、韓国、アメリカを念頭に、通常兵器、兵員の保持等国防費に巨費を投ずることなく、核武装、ミサイルを保持することによって、国土・国家体制の防衛、戦争の抑止力となる、ということのようだ。
 金正恩朝鮮労働党委員長は、今年の4月20日の党中央委第7期第3回総会で「並進路線」の勝利宣言を出したという。つまり一連の核実験、ミサイル発射実験の成功をもって「核の兵器化」を実現したとし、翌21日からか核実験と大陸間弾道弾ミサイル(ICBM)の試射を中止した。
 そしてそのことが「4・27南北首脳会談」の実現につながり、さらに北部核実験場の廃棄、ミサイル発射台の破壊などをもって、米朝首脳会談へのレールが敷かれる方向となったといえるだろう。
 さて、話はいっきに「南北会談」「朝米首脳会談」へ飛ぶのであるが、その前に朝鮮労働党委員長という肩書を持ち、最高指導者の金正恩氏とはいったいどんな人物なのか知りたいところだ。
 1984年生まれで34歳?この若さで一国を統率し、大国アメリカの大統領とわたり合うことのできるほどの器量はどうやって育まれたのか。私は当初、陰に実力者がいて、その傀儡ではではないか(まるで韓国の歴史ドラマ“イ・サン”のような)と思ったりしていた。一応、彼の経歴を一通り読んでそれなりの段階を踏んできたことはわかるが謎も多い。ところが現実には、韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領と歴史的な会談をこなし、あれほど罵り合ったトランプ大統領とも会談をこなした。“ただものではない”といえるのか。ただ外交的には際立っても、内政面では困難を抱えたままであり、その実力は今後を見なければ断定できない面はあるにはあるだろうが。
 米朝首脳会談については簡略して書くが、康さんは予断を許さない要素を幾つか挙げた。例えばアメリカの要求「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」、朝鮮の要求「体制保証」「主権の尊重」「安全保障」がどこまで進展するか(この執筆時点では既に共同声明が発表された)、在韓米軍(少なくとも22,000人を維持)はどうなるか、米韓合同軍事演習(米空軍は4月20日、韓国空軍と15日から実施した大規模な合同戦闘訓練「マックスサンダー」)などは継続か中止か。それもあればアメリカ国内の強硬派の動向、例えば、ボルトン大統領補佐官の「リビア方式」、核放棄ではなく大量破壊兵器の放棄の「永久且つ検証可能で不可逆的」な放棄(PVID)など。
加えれば、さらに指導者が変わった場合どうなるだろう。
 最後に康さんは、「演題」にもある日本にとって対朝鮮政策はどうあるべきか、という課題にも触れたがここでは省く。それは演題の一項目というようなものではないから、私自身改めて考えてみたいと思うからだ。

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