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2016年8月 7日 (日)

浅田次郎「獅子吼」を読む

短編小説を書くのは「真夏の夢」
 浅田次郎の短編集は「月のしずく」「姫椿」「月島慕情」「沙高樓奇譚」などがあり、いずれも読んだが「草原からの使者」は、タイトルに見覚えがあるが、書棚にないから読んでいないのかもしれない。それで今回、月刊誌の別冊文芸春秋やオール読物掲載の短編種をまとめた「獅子吼」が出されさっそく読み切った。
 冒頭の「獅子吼」を読んだ後、百獣の王・ライオンがテーマだったから、そのまま動物の目線から人間世界、愚かな戦争などを擬人風に語っていくかと思えば、それはそれで完結したものだった。おさめられた短編は、「帰り道」「九泉閣へようこそ」「うきよご」「流離人(さすりびと)」「ブルー・ブルー・スカイ」は、それぞれが置かれた厳しい状況の中で、何とか切り開いていくような、突き放すようでどっこい「人の情」「男っ気」で締めくくられる、浅田文学が収められていた。
 浅田文学の特徴を私は「投網方式」と名付けているが、いくつかの切り口を並べながら、最後は投網を投げ、絞り込んで引き上げるように結末に導き、網の中の魚がなんであったか読者の想像に任せる、という風な趣なのである。
 浅田の小説を読んだ後、長編小説は、なんでこんな小説が書けるのだろうと遠い存在になるが、短編小説なら、ひょっとして私にも書けるかもしれない、と思わせるところが凄い。
 もし私に、ある結末にどんでん返しのような、あるいは“そういうことだったのか”といったオチが見つかったなら、短編小説に挑戦してみようとは思うのだが、生涯、そういう機会はないだろうけれど「真夏の夢」はいつまでも見させてほしいものだとは思う。

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