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2009年7月 7日 (火)

七夕夢想(再録)

 一作きりの三枚劇場
 詩集「坂」(2007年刊・私家版)のあとがきのところで、以下の前書きをつけて、三枚劇場「七夕夢想」を付加した。趣味の域を出ないもので、ただただ楽しんだのであった。それでここに再録してみた。
 「今は休刊となってしまった、やなせたかし編集の『詩とメルヘン』に『三枚劇場』という原稿用紙三枚程度のメルヘン風物語の投稿欄があった。私には、詩よりこのコーナーが合っているような気がして比較的よく読んでいた。出来ればそんなものを書いてみたいなあと思って、試みたのが「七夕夢想」であった。
 試みてみたが、実際、仕上げたのはこの一作だけである。やはり着想には、それなりの積み重ね、才能はいることは確かである。また、中日新聞の日曜版には『三〇〇文字小説』というのもあって、“ああ、いいなあ ”と、惹かれている。」

 七 夕 夢 想
 差出人のない白い角封筒が届いたのは、昨日のことだった。開けてみると絵葉書が一枚入っていて、他にこんなメモ書きが添えられていた。
 『あなたから遠く離れていってしまった人で、いま会いたいという人に、この絵葉書を六日の夜十二時に投函してください。明日の七夕の夜に会えます。亡くなられたご両親とかへは、あて先なしでもけっこうです』と。
 いろいろ考えた挙句、親父宛に出すことにした。おもて面に名前を書いたが「戒名なんていらないよな。だいいち覚えていないし・・・」といいつつ、なんか一言添えるのもいいかなと、うら面を改めて見てみると、そこには、短冊のついた笹の葉、天の川、それになぜか上弦の月を配した、どこにでもあるような、水彩画の絵が描かれていた。
 しばらくじっと見ていると、上弦の月が、何となくこちら側に顔を向けるような感じに見えてきて、うっすらと人の顔が浮き出てきた。あっ 親父の顔だ!と思った瞬間、不覚にも絵葉書の上に涙を落してしまった。
 すると何としたことか、その絵葉書が、くつくつ、くつくつと小さな音を出し、泡が浮き出てきて広がっていった。すると天の川は、まるで本物の川のようなせせらぎとなり、笹が語りかけるように小さく揺れながら、しばらくして天の川の中に倒れこんでいった。
 そうして、どうしようもないまま見ていると、その絵葉書は、こんどはじゅくじゅくと音を立てながら次第に全体が泡に包まれていった。あの上弦の月が泡の中に消えた途端、絵葉書は、その場から消えてしまった。
 なんだこれは?と狐につままれたように呆然としていると、例の白い封筒から、メモがもう一枚はらりと落ちた。そのメモには、こう書かれていた。
 『この絵葉書には、絶対水をかけないでください。上質完全な水溶紙を使っています』
                     
〈二〇〇五年七月七日〉

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