連載小説:「許されざる者」(毎日新聞朝刊)完結
許されざる者とは誰か
毎日新聞の朝刊に連載されてきた辻原登の「許されざる者」が、28日、582回で完結した。
彼の経歴を観ると、1945年、和歌山県生まれ。平成2年 中編小説 『村の名前』 (第103回(平成2年上半期)芥川賞受賞)/平成11年 長編小説 『飛べ麒麟』(第50回(平成10年度)読売文学賞受賞) /平成13年 短編小説集 『遊動亭円木』(第36回(平成12年度)谷崎潤一郎賞)/平成18年 短編小説 『枯葉の中の青い炎』(第31回(平成17年度)川端康成文学賞受賞)/平成19年 長編小説 『花はさくら木』(第33回(平成18年度)大佛次郎賞受賞)とある。
私が彼の作品を読むのはこの新聞小説が初めて。前にも書いたが、小島襄の「日露戦争」など、一連の「日露戦争」関連の小説、新書類を読んでいたので、物語の展開がそちら方面に展開していくと期待もしていたが、作者の出身地和歌山・森宮(しんぐう・架空)を舞台とする、幸徳秋水も顔を出す「熊野革命五人団」と、主人公の医師槇(まき)隆光(「毒取ル)と呼ばれる)を中心とする「恋愛小説」として展開して終わる。
私は、タイトルの「許されざる者」に関心がいき、許されない行為が何で、その当事者がどうなっていくかに興味を持って読んでいた。
「許されないであろう」ことの最大の山場は、槇と最後の森宮藩主の長男である陸軍少佐・永野忠庸(ただやす)の妻との不倫。しかしこれが辻原の小説という世界で語られる時、「不倫」という言葉には似つかわしくない二人の関係が読者を取り込む。終章で、前後して渡米する二人に読者は、羨望にして安らかの未来を望んだのではなかったろうか。
一方、背景としてある「日露戦争」を推進した明治政府と、開戦に狂喜する国民、またポーツマス条約で賠償金を取れなくて、焼き打ち、暴動に走った国民はどうであったのか。戦場では多くの兵隊が戦病死したが、その原因が「脚気」であり、食事の偏りからくることを認めず、「ウィルス説」に固執した森林太郎(森鴎外・日露戦争に第二軍軍医部長として出征。後に陸軍軍医総監<中将相当>に昇進し、陸軍省医務局長に就任した)の責任は許されるのか。
反戦と社会主義思想、ロシア革命にあおられ「爆弾闘争」に決起した「熊野革命五人団」は、「許されざる者」としてあったのであろうか。
近代日本の創世記・明治という大きな時代背景と、「森宮」という小さな町を舞台にして、その時代に生きた人々の、その一人一人の姿を散りばめた展開に、この小説の醍醐味があったのではないだろうか。宇野亜喜良の挿画も大いに楽しんだ。
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